2009年05月31日

●5つの波

NHK BSで、フランスの経済学者ジャック・アタリのインタビュー番組
「世界を襲う5つの波」を再放送していた。詳細に関しては、下記ブログサイト

ジャック・アタリ緊急インタビュー第2回「世界を襲う5つの波」
http://d.hatena.ne.jp/honduras/20090505

にて、くわしく説明されてますが、5つの波というのは、

第1の波  アメリカ支配の崩壊
第2の波  多極化秩序
第3の波  グローバルなルールと統治
第4の波  超紛争
第5の波  超民主主義

という段階でこれからの世界が進んでいくという予測で、最悪のシナリオを避けるためにも、「利他主義」という考え方が重要になるとジャック・アタリは警鐘している。真の賢さは、他人を愛する心であり、そうした「博愛精神による価値観の変化」は教育により実現可能だ、とも予測している。

また、超民主主義の段階になって起こる変化として、通常のサービス業に従事している人のように、「他人に満足を与えなければ自分の存在が危うくなる」との考え方に人々が気づきはじめたとき、真に反映し継続していくビジネスが構築されていく、という予測はある種、納得できるような気がする。

いずれにしても、現在は、第1の波 アメリカ支配の崩壊 が進行している状態であり、それが今後どう変化していくかは、人間の行動と価値観の変化次第だと予測している。


2009年05月29日

●3つの脅威

ここ数ケ月のテレビのニュースを傍観者的に見ていて感じるのは、
今、社会を脅かしている大きな脅威がいくつかあることがわかる。
時系列的に3つだけ列記すると、

1.金融破綻による経済崩壊、大失業時代の到来
2.新型インフルエンザによるパンデミックの恐怖
3.北朝鮮のミサイル・核兵器の脅威

どの脅威も、それが起こった時期には、マスコミが競争のように報道し、また別の事件が起きると、前のニュースを忘れたかのように新しい脅威について報道する、この繰り返しが今のマスメディアの姿だと思う。その時期その時期に話題になる事件をとりあげるのが、マスメディアの仕事だから、それはそれでいいんですが、どの問題も一向に解決していないまま、次の新しいニュースを提供されると、以前の問題はすでに解決してしまったような錯覚におちいることがある。目の前の報道だけに意識を奪われ、重大な出来事なのにその重要性に麻痺して忘れしまうような状態だ。

どの問題も深刻なもので、誰しも何がしかの影響を受けているはず。景気低迷や失業問題は、我々の仕事や生活に密接に関係しているし、新型インフルエンザの経済的影響や混乱も身近なもの。また日本海の近くに住んでいる山陰の住人は、北朝鮮とも位置的にかなり近いわけで、いつ狂った国家が核兵器を積んだミサイルのボタンを押して日本海近辺に発射するとも限らない。ちょっと深く考えてみると、本当に深刻な社会情勢の中、暮らしていることになる。

もちろん、もっと悲惨な環境で暮らしている人たちもいる。
食料がなく餓死していく人たち、戦場で武器を手にする子供たち、生活のため身を売って暮らしている少女たち。言い出したらキリがないし、この世の中は何て不条理なのだと思う。

しかし、現実を直視すればすれほど、精神的にはつらくなる。
だからこそ、頭の中ではわかっている社会の不条理も見て見ぬふりをして、淡々と生活していくしかない。それが現実を生きるということなのかもしれない。

ただ、我々が直面しているいくつかの脅威や社会の不条理は頭の片隅に常に置いておかないといけないと思う。何ひとつ解決してないわけだから。

めずらしくまじめなこと書いてますが、次から次に起こるそういった世の中の多くの出来事に麻痺しそうになる自分に対して戒めて書いているのだと思う。

次に来そうな脅威は、

■関東地区で起こる直下型地震の脅威
■火山の大規模爆発
■サイバーテロによるITシステムの崩壊
■生物兵器によるバイオテロの脅威

映画やドラマじゃないけど、
いつどこで何が起こっても不思議がない現実的で深刻な脅威だと思う。
自然の脅威はともかく、人間の起こす脅威だけはなんとか避けたいものだ。

2009年05月13日

●麻生久美子「笑っていいとも」

麻生久美子

明日(5/14)、「笑っていいとも」のテレホンに麻生久美子が登場するらしい。
4月27日の「情熱大陸」以来のテレビ出演だと思うが、なかなかバラエティに登場しない麻生さんが生放送のトークコーナーに出演するのは、わたしの記憶でははじめてではないかと思う。

最近、出演映画の公開も増えているとはいえ、ここ最近のテレビ露出は、ドラマ「時効警察」以来かなという感じがする。楽しみである。

麻生久美子・情熱大陸
麻生久美子・関連動画


おと・な・り
映画「おと・な・り」公式サイト

インスタント沼

映画「インスタント沼」公式サイト

2009年04月22日

●深津絵里「女の子ものがたり」

人気漫画家・西原理恵子の自伝的マンガ「女の子ものがたり」を深津絵里が演じた作品。コメディからシリアスまで、演じ分けることができる深津絵里の女優としての幅の広さは、多分、ここ数年で日本を代表する最高峰の女優にまで評価は高まっていると思う。久々の主演映画で本人もかなり気合いいれて演じてくれていると思う。

映画「女の子ものがたり」は、ちょっとダサい売れない漫画家という設定で、かなり笑わせた上で感動させてくれることでしょう。

女の子ものがたり
女の子ものがたり
http://onnanoko-story.jp/

女の子ものがたり

女の子ものがたり

映画「女の子ものがたり」 深津絵里らが舞台あいさつ

深津絵里:ダメ作家に変身
マンガ「女の子ものがたり」が映画化 西原理恵子も特別出演

深津 絵里 - アミューズ オフィシャル ウェブサイト
深津絵里研究所
深津絵里・画像検索

2004年11月22日

●人間洞察と感情描写~ポン・ジュノ

オリジナル記事
http://www.gselect.com/gauzine/56/index.html#001

今回は「ほえる犬は噛まない」「殺人の追憶」の脚本・監督を手掛けた
韓国のポン・ジュノ監督についてご紹介します。

ポン・ジュノ(奉俊昊/Bong Joon-ho)は、1969年韓国生まれで
詳しいプロフィールは下記サイトにあります。
http://www.seochon.net/korean_movie/director/pongjunho.htm
http://www.hoeruinu.com/cast.html


「ほえる犬は噛まない」と「殺人の追憶」の2本の作品を見たのですが
そのセンスと演出力はまさに驚異的でした。
まだ35歳という若さで、すでに熟練した手腕を感じさせます。

日本のアニメ、漫画に関する造詣も深く、作品の中でも随所にその影響が
感じられます。

映画は一言では説明のできない多面性を帯びていて、コメディとシリアスが
ミックスされた独自のテイストを持っています。

「ほえる犬は噛まない」のさりげなく伏線をはった細かくディテールの
積み重ねや「殺人の追憶」の現実にあった未解決連続猟奇殺人事件を
扱う「実話サスペンス」という斬新なアイデアなど。

ある人が「黒沢明の後継者は、韓国に生まれた。」と表現してましたが、
決してオーバーでもないような気がしました。

人間洞察と感情描写においてすでに若き巨匠の領域に達しています。

マーティン・スコセッシや黒沢明のような激しい感情表出も表現できる正統派
監督の流れを持ちながら、新しい感覚もあり、また音楽センスも秀逸です。


以下、作品ごとの関連情報をご紹介しておきます。

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ほえる犬は噛まない(2000)
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連続小犬失踪事件をめぐって展開される、ちょっとシュールで、
ちょっとせつない新感覚ムービー。

■公式サイト    
 http://www.hoeruinu.com/

■ポン・ジュノ監督ティーチ・イン
 http://www.geocities.co.jp/Hollywood/3732/pjh_teach.htm

■個人的レビュー
 http://gaucho.jugem.cc/?eid=72

■主演女優ペ・ドゥナ
 http://www.k-plaza.com/photo/photo_dona001.html

■Amazon DVD
 http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B0001N1QSQ/

※ほえる犬は噛まない【諺】=口やかましい者ほど、実行が伴わないの意。

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殺人の追憶(2003) 
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殺人というタイトルがついているわりには、思わず笑ってしまうような
コメディ的要素もあり、刑事モノとしても一流の人間ドラマ。
制作費は約3億で、韓国国内での観客動員は560万人を越える。


■公式サイト
 http://www.cqn.co.jp/mom/

■ポン・ジュノ監督インタビュー 
 http://www.cqn.co.jp/mom/FLASH/CONTENT/dir_top.html

■プロダクションノート
 http://www.cqn.co.jp/mom/FLASH/CONTENT/prod_top.html

■予告編
 http://www.cqn.co.jp/mom/FLASH/CONTENT/trailer_top.html

■キャッチコピー
 おまえが殺ったことを憶えているか?(実在する犯人へのメッセージでもある)

■個人的レビュー
 http://gaucho.jugem.cc/?eid=71

■Amazon DVD
 http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B0001M3XHY/

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三人三色(2004)
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韓国チョンジュ国際映画祭が、毎年3人の気鋭の監督に制作を依頼する
デジタルムービー・オムニバスの一編。約30分の短編作品。

■予告編
 http://moviessearch.yahoo.co.jp/detail?ty=mv&id=321305
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韓国ドラマもおもしろいですが、韓国の映画人はもっとスゴイ人がたくさん
隠れているようですね。

2004年10月20日

●会話のコラージュ~リチャード・リンクレイター

今回は、「ウェイキング・ライフ」「スクール・オブ・ロック」などの作品
を手掛けている、リチャード・リンクレイターについてご紹介します。

■ リチャード・リンクレイターの作品群
http://www.geocities.co.jp/Hollywood-Cinema/9328/indie/linklate.html

IMDb | Richard Linklater
http://www.imdb.com/name/nm0000500/

リンクレイターの作品は、特殊なスタイルを持っているため、必ずしも万人に
受けるものではなく、日本では公開されてない作品もいくつかあります。
(「Slacker」「SubUrbia」など)

「Slacker」(1991)# 日本未公開
「バッド・チューニング」(1993)
「恋人までの距離<ディスタンス>」(1995)# ベルリン国際映画祭監督賞
「SubUrbia」(1991)# 日本未公開
「ニュートン・ボーイズ」(1998)
「ウェイキング・ライフ」(2001)# NY映画批評家協会最優秀アニメーション賞
「テープ」(2001)# ベネチア国際映画祭幻燈賞
「スクール・オブ・ロック」(2003)
「Before Sunset」(2004)

■ さまざまな表現スタイルと会話の妙
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「恋人までの距離<ディスタンス>」(1995)
 http://www.geocities.com/Hollywood/Movie/6017/

イーサン・ホークとジュリー・デルピーの会話が延々と続く
「恋人までの距離<ディスタンス>」は、旅先で偶然出会った男女のウィーン
での一日を描いた作品ですが、ありがちなラブストーリーとはひと味違った
独特の作品に仕上がっています。

二人の会話はあまりに自然なので、一見即興的な会話のように感じますが、
そのセリフは、シナリオを忠実に再現していったものとのこと。
会話の内容は多岐に渡り、文学的、哲学的テーマから、二人の関係がしだいに
深まっていく様子がドキュメンタリーのように描かれています。
http://www.geocities.co.jp/Hollywood-Cinema/9328/film/bs.html

こうした会話のおもしろさがリンクレイター作品の大きな魅力になっています。
セリフが多い分、日本語吹替版で見るのもひとつの楽しみ方かと。

# この作品の続編が最新作の「Before Sunset」(2004)
# http://wip.warnerbros.com/beforesunset/
# http://movie.nifty.com/cs/catalog/movie_677/catalog_B00109_1.htm
# 9年後のパリでの再会というお話。
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「ウェイキング・ライフ」(2001)
 http://www.foxjapan.com/movies/wakinglife/

この作品の特筆すべき点は、やはりその映像手法かと思います。
実写映像をデジタル処理し、アニメーターのデジタル・ペインティングによって
加工されたアニメーション映像は、常に浮遊感を漂わせながら揺れ続け、
ある種の視覚的ドラッグ効果を生み出しています。

○製作過程のメイキング・ビデオ(4分)
 http://www.foxjapan.com/movies/wakinglife/clips/

さらにストーリー性のない哲学的会話の洪水によって、観客は思考しながらも
ある種の夢の世界のようなトランス状態に身を委ねざるおえない感覚に
引き込まれていきます。

夢か現実か、生か死か、人間の存在とは、時間の意味とは、個人と社会
運命と自由意志の関係は、生まれかわりはあるのか、というような根源的な
疑問と仮説が登場人物の会話の中にランダムにコラージュされていきます。

○レビュー
 http://www.foxjapan.com/movies/wakinglife/column/index_frames.html

 「斬新な映像、マジカルで魅惑的な傑作」
   ロジャー・エバート(シカゴ・サンタイムズ誌)

 「革新的で知的、幻覚のような映像世界に酔え」
   エンターテインメント・ウィークリー誌

# ベネチア国際映画祭 未来の映画賞、幻燈賞
# 全米映画批評家協会賞 最優秀実験的映画賞など受賞。
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「テープ」(2001)2003年7月国内劇場公開
 http://www.mediasuits.co.jp/tape/

麻薬密売人、映画監督、女検事補の3人の男女の心理が複雑にからみあう
モーテルの一室を舞台にした密室会話劇。

久々の再会をした高校の同級生だった3人の間で、過去のある出来事について
の真実がしだいに明らかになっていく…。ミステリアスかつスリリングにその
プロセスが進行する、限定された密室でのワンシチュエーションドラマ。

こういった会話劇は脚本の良さと役者の演技に委ねられる感じがしますが、
その分、低予算でも制作が可能であり、リンクレイターのセリフの力と実験的
精神が存分に発揮された作品と言えます。
SONYのデジタルカメラPD-100PALで撮影され、Final Cut Proにより編集。

○予告編 http://www.mediasuits.co.jp/tape/trailer.html
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「スクール・オブ・ロック」(2003)
 http://www.schoolofrock-movie.jp/

この作品の脚本は、本編にも役者として登場しているマイク・ホワイトの手
によるものなので、リンクレイターは職人監督として演出に徹しています。
主演のジャック・ブラックの怪演をうまくコントロールし演出することによって、
ひと味違った学園コメディに仕上げています。5ケ月に及ぶ子役のオーディション
とキャスティングがうまく機能した楽しめる作品。
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■ インディーズ魂としての実験的精神

このようにリンクレイターの作品は、さまざな表現スタイルと独自の実験的精神
が投入された独自のテイストを放っています。

ストーリー性の欠如、一貫性のない会話、とりとめのない展開は、
リンクレイターの個性でもあり、予定調和で仕上げるメジャー作品に対する
ある種のインディーズ作家としての挑戦状のようにも思えます。

ただ「ウェイキング・ライフ」で見せた、全く新しい映像スタイルや
「テープ」のような限定された状況で繰り広げられる心理描写や会話劇は
リンクレイターの映画作りに対するひとつのアイデアの提案でもあり、低予算
でもおもしろくて革新的な作品が創れる可能性を世界の映画界に提示している
ようにも思えます。

独創的で斬新な表現ほど、最初はなかなか理解されにくい傾向はありますが、
脚本家、映像作家としてのリンクレイターの実験はきっと今後も続いていく
ことでしょう。

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■ リチャード・リンクレイター関連サイト
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「ウェイキング・ライフ」(2001)
 http://www.foxjapan.com/movies/wakinglife/
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「テープ」(2001)
 http://www.mediasuits.co.jp/tape/
 http://www.cinematopics.com/cinema/works/output2.php?oid=3322
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「スクール・オブ・ロック」(2003)
 http://www.schoolofrock-movie.jp/
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「Before Sunset」(2004)
 http://wip.warnerbros.com/beforesunset/
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2004年08月20日

●装飾を排して感情の深層を伝える~ダルデンヌ兄弟

今回は、ドキュメンタリータッチの独自の作風で世界的に高い評価を得ている
ベルギーのダルデンヌ兄弟についてご紹介します。

■ ダルデンヌ兄弟の作品
 http://www.bitters.co.jp/dardenne/index.html

ダルデンヌ兄弟は、兄のジャン=ピエール・ダルデンヌ(1951年生まれ)と
弟のリュック・ダルデンヌ(1954年生まれ)の兄弟監督コンビです。
日本国内で観れる作品は、

「イゴールの約束」(1996)
「ロゼッタ」(1999) 
「息子のまなざし」(2002)

ですが、それぞれの作品は、
 http://www.bitters.co.jp/dardenne/index.html
に記載されているよう、さまざまな映画賞を受賞してます。

特に「ロゼッタ」は、1999年カンヌ国際映画祭のパルムドールを受賞して、
ダルデンヌ兄弟の名前を世界的なものにしました。
「息子のまなざし」でも、オリヴィエ・グルメが2002年のカンヌで主演男優賞
を受賞したり、ベルギー・アカデミーでは最優秀作品賞、監督賞、主演男優賞
の三冠に輝いています。


■ ダルデンヌ兄弟の作風

もともとドキュメンタリー作品を制作していたダルデンヌ兄弟は、1978年ごろ
から数多くの作品を作っています。それらは、労働者階級や移民の生活、
土地整備や都市計画の問題など、社会的、政治的な内容を含んだ問題をテーマ
にしています。その視点は、その後の作品にも継承されており、厳しい社会の
現実やその中で暮らす労働者階級の生活がリアルに描き出されています。

それは、ときに悲惨に、ときに残酷なように見えますが、その苦悩や葛藤の
中に人間の真の姿が描き出されています。


■ 一見無造作に見えるカメラワーク

ダルデンヌ兄弟の作品を見てまず驚かされるのは、カメラと登場人物の距離
が異様に近いこと。「息子のまなざし」の冒頭、カメラは主人公オリヴィエ
の顔よりも、背中や後頭部を映している時間のほうが長く、カメラは執拗に
オリヴィエにつきまとい、彼の行動をつぶさに映しだしていきます。

こうしたカメラワークは、ドキュメンタリーのようなリアル感を出すため
一見、無造作に即興的に撮影されているような印象を受けます。

しかし、「息子のまなざし」のDVDに収録された監督と俳優のインタビュー
によると、この撮影は何回もリハーサルを重ねた上でのものであり、俳優
の立ち位置もカメラの動く位置、移動の流れなども事前に綿密に計算された
予定どうりの動きとのこと。

まるで即興的に撮影していったように見える一見無造作な動きは、より自然
に見えるように緻密に仕組まれていたものであることを知り、ちょっと驚き
ました。

撮影には、なんと13週間の時間がかけられており、シーンごとの緩急を
つけるため、同じシーンを違うスピードで撮影するなど、動きの違うパターン
を何テイクか追加撮影しているとのこと。そこまでしているからこそ、
主人公の日常をよりリアルに、より自然に映しだしているのかもしれません。


■ 排除されたナレーションと音楽

物語を伝えていく上で、まずその舞台や状況設定を観客に説明するため
「ナレーション」が挿入されることがよくありますが、ダルデンヌ兄弟の
作品には全くナレーションは存在していません。なので、観客が物語の設定
を知る手がかりは映像しかありません。その分、画面に集中せざるおえない
というわけです。

さらに驚くべきことに、「ロゼッタ」にしても、「息子のまなざし」にして
も、全く「音楽」というものが使われていません。物語が終わり、エンドロ
ールが流れるシーンさえも音楽はありません。

普段、我々の見ている多くの映画やドラマでは、シーンを盛り上げるために
音楽をつけたり、効果音を入れたりしています。それらの音響効果は映像と
同期して、シーンに何らかの意味と抑揚を与えていきます。

しかし、ダルデンヌ兄弟は、説明的な音楽をつけることを好まず、映像のみ
で物語を伝えていこうとします。そして、音楽や効果音を使わないことに
より、逆に生活音や車のエンジン音などのノイズ音が浮き上がってくるため
それらの音がより生々しい緊張感のある映像を作り出していきます。


■ ダルデンヌ兄弟の映像手法

ナレーションや音楽を排除することによって、観客は映像に集中します。
さらにセリフも最小限しかないとなると、残されたものはその映像と役者
の演技になってきます。

肉迫するような執拗なカメラワーク、そこに映しだされる役者の表情と肉体
が物語を語っていくことになります。この手法は役者にも相当な負担が
かかってきます。

「息子のまなざし」で、2002年カンヌ映画祭、主演男優賞を受賞した、
オリヴィエ・グルメは、DVDのインタビューでも、その苦労を語っていま
した。この物語の主人公は、ひじょうに複雑な状況に置かれているわけで
精神状態も不安定で、まさに挙動不信な男です。

さらに、もともと無口な男なので、その不安定な感情をセリフではなく、
肉体を通して表現しなくてはいけません。でも、オリヴィエ・グルメは
その難題を見事にクリアーして、「体」で語ってました。

「息子のまなざし」を見た野田凪さんの感想の中で、

「後ろ姿だけで心の揺さぶりを表現できる俳優を初めて見た気がします。」
 http://www.bitters.co.jp/musuko/comment.html

というのがありますが、オリヴィエ・グルメはまさに「背中で」見事な演技
を見せてくれてました。役者の最高の演技を引き出すのも、監督との密接な
コミュニケーションがあってのことかと思います。

ラストシーンを見終わった瞬間になぜか、ふー、と息をついてしまったのは、
それまでいかに緊張して見ていたのか、ということに気がついた瞬間でも
ありました。知らないうちに物語に引き込まれてしまっていたようです。


最後に、ダルデンヌ兄弟の才能や「息子のまなざし」に対する評価は、さ
まざまなメディアの作品評をご覧になればご理解いただけるかと思います。

以下、一部抜粋しておきます。
----------------------------------------------------------------------
  ダルデンヌ兄弟のリアリズムはすべてを溶かし込む。
  どの要素も突出することはない。
  ひとつが誤ればすべてが崩れ去るほどの、見事な均衡だ。
                カイエ・デュ・シネマ(フランス)
----------------------------------------------------------------------
  持続し続ける密度、素晴らしいほどの厳格さ。
  無駄な場面はひとつもなく、余計な言葉もひとつとしてない。
  欠くことのできないものだけがある。
                      テレラマ(フランス)
----------------------------------------------------------------------
  ダルデンヌ兄弟は、物事の表面を丹念になぞりながら、
  深層に入り込む。日常のごく普通で何気ないしぐさを見つめながら
  魂に触れる。そこにこの映画の不思議がある。
                    ル・フィガロ(フランス)
----------------------------------------------------------------------
  一切の無駄を排した、
  信じがたいまでに倫理的・美的深みを持った作品。
                    エル・パイス(スペイン)
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  http://www.bitters.co.jp/musuko/eigahyo.html より抜粋
----------------------------------------------------------------------

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■ ダルデンヌ兄弟 関連サイト
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「イゴールの約束」
 http://www.bitters.co.jp/filmbook/igr/igr_top.html 
 http://c-cross.cside2.com/html/a10i0001.htm
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「ロゼッタ」
 http://www.bitters.co.jp/filmbook/rst/rst_top.html
 http://corpus.pobox.ne.jp/contents/cine_journal/data/rosetta.htm
----------------------------------------------------------------------
「息子のまなざし」
 http://www.bitters.co.jp/musuko/
 http://www.diaphana.fr/lefils/
 http://www.miyadai.com/index.php?itemid=30
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